STORY
1968年、アメリカとロシアが宇宙を目指していた頃、イギリスは海洋冒険ブームに沸いていた。そんな中、ひとりぼっちでヨットに乗って、9ヶ月間一度も港に寄らず、世界一周を果たすという“ゴールデン・グローブ・レース”が開催され、ビジネスマンのドナルド・クローハースト(コリン・ファース)が名乗りを上げる。彼は、船舶用の測定器を開発して会社を立ち上げていたが、事業は行き詰っていた。いつかは自分の夢のために、開発した機器を使いたいと思っていたドナルドは、愛する妻クレア(レイチェル・ワイズ)に賞金を、まだ幼い3人の子供たちに名誉を贈ろうと閃いたのだ。
町の裕福なビジネスマンのスタンリー・ベスト(ケン・ストット)に投資を持ち掛け、ジャーナリストのロドニー・ホールワース(デヴィッド・シューリス)に広報を頼むドナルド。その見事な話術と人懐こい笑顔で、たちまち皆を巻き込んでいく。彼は近海にしか出たことのないアマチュアセーラーだったが、そのことがかえって話題となるのだった。
アマチュアの果敢な挑戦にスポンサーも現れ、夢に胸を躍らせた町の人々に賑やかに見送られながら、ドナルドは家族の愛を胸に出発する。だが、彼を待っていたのは、厳しい自然と耐え難い孤独だった。さらに、ヨットのあちこちが故障し、日に日に遅れをとる。追い詰められたドナルドは、嘘の報告をしてしまい、新聞に「新記録だ」と書き立てられ、世界から注目される。ドナルドの真の旅は、そこからが始まりだった––。
※ 敬称略・順不同